ゲーム障害・ゲーム依存症を軽く考えてはいけない??
ブログ 2023.01.11ゲーム依存症
こんにちは!ハートライン沖縄クリニック医師・院長の吉澤です。
「ゲーム障害」とは何かご存じですか?
ゲーム障害のことを「あ〜、ゲームにハマっている状態のことでしょ?」と気軽に考えていませんか?
それは大きな間違いです。「ゲーム障害」はゲームにのめり込み依存してしまう、れっきとした病気です。
「ただゲームに夢中なだけ」と軽く考えているうちに進行してしまう、治療が必要な病気なのです。
「依存症」と耳にすれば、「アルコール依存症」を思い浮かべる方は多いと思います。ゲーム障害もアルコール依存症と同じ、恐ろしい病気である依存症です。治療しないと悪化して日常生活もままならなくなります。
オンラインゲームが盛んな韓国では、未成年者や20代でゲームが死因となる死亡事故が起きており、社会問題になっています。
ここからは「ゲーム障害」とは何なのか、その原因や症状、ゲーム障害を予防する方法について詳しくご紹介します。
ゲーム障害とは何ですか?
「ゲーム障害 」は 「ゲーム依存症 」とも呼ばれ、パソコンやスマートフォンを使ったゲームやオンラインゲームに夢中になり依存し、ゲームを中心とした生活を送ることで健康や社会生活に悪い影響を与え続けている状態のことです。
2019年、世界保健機関(WHO)により「ゲーム障害」が正式に疾患として認定されました。WHOでは以下の4つの症状すべてにあてはまり、12ヶ月以上続く場合、ゲーム障害と診断しています。
・ゲームをしたい気持ちを抑えきれず、プレイ時間を自分自身でコントロールできない。
・日常生活における他の関心ごとや活動よりもゲームを最優先してしまう。
・仕事、学業、健康などに否定的な問題が起きてもゲームをやめることができない。
・ゲームをし続けることによって、個人、家庭、社会、学業、仕事などに深刻な影響を及ぼす 。
幼少期は進行が早いので、これらすべての症状にあてはまり、しかも重症であった場合、12カ月より短い期間でもゲーム障害とみなされると言われています。
なぜゲームにハマってしまうのか?
ゲームは魅力的です。夢中になるように作られています。ですが、ゲームをする人が皆ゲーム障害になるというわけではありません。なぜゲーム障害になってしまう人が存在するのでしょうか?
考えられる理由は3つあります。
理由について詳しくご説明します。
①依存性の高いゲームコンテンツ
ゲームとは、元々は手軽に気分転換ができる遊びとして、またゲームを通してコミュニケーションを図ることができる遊びとして発売されました。しかし、最近のゲームに見られる特徴として、プレイする人に1分でも長く遊んでもらおうと、さまざまな工夫をしてゲームに夢中にさせ、のめり込ませようとするものが主流になっています。そのため、子どもだけでなく大人も依存状態に陥りやすい傾向があります。
ゲームは自分自身が主人公となり進めていくことができるため、キャラクターと自分を同一視しやすく、クリアしたときの達成感やレベルアップの喜びを感じられます。そういったゲームの醍醐味が「ゲームをもっとしたい!」という気持ちを抑えられなくし、ゲームに依存してしまう要因のひとつとなってしまうのです。
また、特定のカードを使うことでパワーアップしたり、何種類かのカードを使うことでレベルアップしたりという、コレクション要素の強いゲームも魅力的です。アーティスティックなイラストや特典も、コレクション欲をかきたてます。
そして、オンラインゲームの特徴として、ゲーム内のコミュニティで仲間を作ることができ、その仲間と協力プレイが楽しめます。自分の役割があるからこそ「自分は必要とされている!」と感じることができ、なかなか辞めることができず、結果長く続けてしまうのです。
②ゲームをしやすい環境
やりたいときにいつでもゲームができる状況は、ゲームに依存しやすい環境といえます。
特にお子さまの場合、親が共働きだったりで忙しく一人で過ごす時間が多かったり、子供部屋にゲーム機があって自由に遊べたりすると、宿題などのやらなければならないことをやらずにゲームに時間を費やしてしまいがちです。
また、スマートフォンゲームやソーシャルゲームと呼ばれるSNS専用ゲームは、手軽にいつでもどこでも遊べるため、大変依存性が高いと言われています。
③脳の快楽物質
「楽しい」「ワクワクする」「ドキドキする」そんなゲームは誰しも夢中になります。そういった状態になると、脳からドーパミンという快感物質が放出されます。ドーパミンが分泌されると、ゲームへの気持ちが抑えきれず、「もっとゲームがしたい!」となるのです。しかし、人間の体はバランスを保つために、ドーパミンが大量にある状態が続くとドーパミンを受け止める受容体の数が減ってしまい、ドーパミンを抑制する機能が働きます。その働きによってドーパミンが大量に分泌されても取り込む量を減らしてしまうのです。
しかし、刺激を求めてゲームをプレイし続けると、脳は理性が働く部分よりも本能や感情が働く部分に支配されるようになります。そうなると、理性よりも「もっとゲームをしたい!」という欲求が勝ち、欲求のまま行動するようになります。
脳の理性が働く部分がまだ十分に発達していないお子さまは、大人よりもゲーム障害になりやすく、重症化する可能性が高いと言われています。
ゲーム障害になったらどうなるの?
ゲーム依存症になってしまうと、どうなるのでしょうか。
ゲーム障害になってしまったお子さまに起こった問題を調査すると、不登校や引きこもり、退学、暴力など、日常生活に支障をきたす行動が多く見られました。
もしお子さまにゲーム障害になりそうな兆候が出たら、出来るだけ早く気づいてあげてください。少しでも早めの対処が重要です。
朝に起きられない
ゲームに依存しつつある子どもは、ゲームをしている間、時間が過ぎることを忘れてしまいます。夜中までゲームをしたり、布団に潜り込んでスマホでゲームをしたりするため、親も寝ていると思い気づかず、その結果寝ずに朝を迎えてしまったりして、睡眠不足になることが多いようです。
ゲーム以外のほかの遊びに興味を持てない
友人との外出やスポーツに興味を持ちません。ゲームに依存してしまっているため、常にゲームのことを考え、ゲーム以外のことをしたがらないのです。
ゲームをもっとしたいために嘘をつく
宿題や親のお手伝いなど、やらなければならないことがあっても、嘘をついてまでゲームをしようとします。そんな状態が続けば、当然勉強をする時間は減り、学力は低下します。
キレやすくなる
暴力的な描写だったり、過激な内容のゲームはたくさんあります。そのようなゲームをプレイし続けると、プレイしている側にも影響を及ぼします。実際に攻撃性が増すという研究結果も出ています。
また、ゲームの影響によって脳の理性的な部分の働きが鈍くなり、自分の思い通りにならないと、物にあたって叩いて壊したり、家族に暴言を吐いたりすることが多くなります。
ゲーム障害を防ぐためにすべきこと
お子さまをゲーム障害から守るために、予防できる方法を学びましょう。
ゲームを始める年齢を遅らせましょう
年齢が低いほどゲームの影響が強く出るので、ゲーム障害が重症化しやすいと言われています。お子さまがゲームをしたいと言ったとしても、ある程度の年齢になってからゲームを始めましょう。
ゲームに関することを記録しましょう
お子さまがすでにゲームをしている場合は、「いつ」「どれくらいの時間」「どこで」「何のゲームをしているのか」を保護者の方がしっかり把握しましょう。
保護者の方が一方的に確認するのではなく、お子さまと一緒に1日のゲーム時間を計算し、お子さまの意見にも耳を傾けながら、ゲームをし過ぎたことによって「何ができなかったのか」を話し合うことが大切です。
最近のゲーム機やアプリには、プレイ時間を確認できる機能がついているので、そのいくつかをご紹介します。
3DS(任天堂)
ゲーム機内の「思い出きろく帳」を使うことで、ゲームで遊んだ時間をグラフで確認することが可能です。
swich(任天堂)
保護者の方のスマホにアプリをインストールすると、そのアプリからお子さまがゲームで遊んでいる時間や状況を確認することができます。
保護者向け Google ファミリー リンク(Google)
保護者の方が端末から、お子さまのアプリや利用制限を設定・管理することができます。
ルールを決めましょう
お子さまのゲームに関する状況がわかったら、ゲームのルールを決めましょう。
「1日○時間まで」「宿題が終わってから夕飯の時間までなら」というように、ゲームをする時間や時間帯を決めたり、「ゲームをするのはリビングでだけ」と場所などのルールを作ってあげましょう。大切なのはただ「ゲームばかりしてちゃだめ!」と制限するのではなく、ルールを具体的に決めることです。ルールを作るときは、親御さまの意見だけを押し付けるのではなく、お子さまの意見もよく聞いて、お子さまにとって守ることができるレベルのルールになるよう話し合って決めましょう。そしてこの一緒に作ったルールはお子さまだけが守るのではなく、家族全員で守りましょう。
実生活を充実させましょう
また、実生活を充実して過ごせるようにしましょう。おしゃべりや旅行、読書、音楽鑑賞、スポーツなど、屋内外を問わずさまざまな体験をし、ゲーム以外で夢中になれることを見つけましょう。日常活動を充実させることで、お子さまの成長を促しゲーム障害を予防ができると言われています。
ゲームをするメリット
ゲームの内容やプレイ時間を考慮することは必要ですが、ゲームには様々なメリットもあります。
1日1時間以内であれば、ゲームをすることで、子どもの生活満足度が上がり、社会性が高まるという研究結果があります(Pediatrics,2014)。
また、創造性が高まり(Computers in Human Behavior.2012)、認知能力が高まるとも言われています(nature)。
まとめ
ゲーム障害について、詳しく理解していただけましたか?
「うちの子、ゲームにハマっているけど大丈夫かしら?」と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、お子さまと一緒にゲームとの関わり方を話し合いましょう。そしてゲームを楽しみ、ゲームのメリットを活かすためにも、ルールを作ってみましょう。
気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
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ハートライン沖縄クリニック 医師 院長 吉澤