リストカットに対する対応
ブログ 2023.03.16自分を傷つけてしまう
故意に自分の体を傷つける自傷行為。具体例として自分を殴る、髪の毛を抜くなどの行為が挙げられます。とある研究では中高生の約1割が自傷行為を経験しており、その半数以上が自傷行為を継続して行っていることがわかっています。もし身近な子どもが自傷行為をしていることがわかったら、私たちはどうすればよいのでしょうか。本日は自傷行為の中でも特に問題になりやすいリストカットをするお子さんについての対応についてお話していきます。
リストカット
みなさんはリストカットについてどんな印象をお持ちでしょうか。もちろん危険な行為だという認識はあると思いますが、心のどこかで「かまってほしいだけ」「アピールしているだけでしょ」と思っている部分はありませんか。そう思ってしまうのも無理はありません。中にはリストカットすることが日常になり、軽い感じで「また切っちゃったー。手当してー。」と話してくるお子さんもいて、とても深刻な悩みを抱えているようには見えないケースもあります。しかし、子ども達はリストカットをはじめとした自傷行為を意味もなく行いませんし、まして「こっちを見てほしい」という注目を集めるためにやっているわけではありません。
なぜそのようにしてしまうのか?
では、どうして手首を切るのか。背景は様々ですが、理由の大半は「すっきりするから」です。リストカットをする子ども達は、日常生活で強いストレスを感じ、耐えています。絶えずストレスのことばかり考え、心と体が疲弊しきっています。そして「もう耐えられない」と思った時にリストカットをします。そうすると痛みと流れる血に意識が向けられ少しだけストレスのことを考えなくて済む時間が作れるのです。つまりリストカットをすることでストレスから逃げることができ、心が楽になるのです。
ですが、人間は慣れる生き物です。次第に今までしていたリストカットではすっきりすることが出来なくなるので、だんだんと傷口が深く、広くなっていき、自傷行為がエスカレートして大変危険な状態になってしまいます。頭では「いけないこと」「もうやめないと」とわかっていても、リストカットをしないと生きていけないというジレンマに陥ってしまうのです。
そんな「リストカットの沼」にはまった子ども達にどのように手を差し伸べればよいのでしょうか。
肯定的な部分を見ること
まずはリストカットをしたことを否定せずに「リストカットをしたことを教えてくれたこと」「大人に助けを求めることが出来たこと」など、肯定的な部分を認めてあげましょう。「リストカットなんて辞めろ」と頭ごなしに否定したり、持っている刃物を取り上げることは逆効果です。信頼できない大人として認識されてしまい、その先に介入できません。
リストカットには必ず背景があります。どうして切りたくなったのか、切る代わりになる行為はないのか、どうしたら切らなくても済むようになるのかを一緒に考えてください。そして子ども達からの信頼を得られてきたら次第に精神科医や臨床心理士などの専門家への橋渡しをしてあげるといいでしょう。
リストカットをはじめとした自傷行為の背景は多岐にわたります。ケースごとに対応する方法は異なりますが、基本ベースは上記の通り、「否定しない」「無理にやめさせようとしない」「専門家につなぐ」になります。間違っても「自分一人で何とかしよう」と抱え込まず、色々な人と相談しながら導いてあげてください。
改善をご希望される方は一度相談にお越しくださいね!
ハートライン沖縄クリニック 医師 院長 吉澤